内田康夫夫人であり、作家・エッセイストでもある早坂真紀の随想を不定期でお届け致します。
春告げ花
2017.3.9 Thu
タクシーの中からコブシの花を見つけた。
今まで気がつかなかっただけかもしれないが、東京でコブシの花を見るのは初めてかもしれない。絵画館前のイチョウの芽吹きもまだだし、芝生だってまだ真茶っ茶なのに、誰かの家の庭で、コブシは真っ白に咲いていた。
軽井沢に帰りたくなって、泣きそうだった。
「何で脳梗塞になんてなっちゃったのよ!」と、夫に理不尽なことを思ってしまった。
コブシは春を告げる花だ。枯山水の軽井沢で、コブシは真っ先に春を知らせてくれる。
ティーサロン『軽井沢の芽衣』の庭にもコブシの木がある。国道18号線沿線にもたくさんあって、まだまだ風は寒いし車はスタッドレスタイヤを履いているのに、
「春が来るよ! 春が来るよ!」と真っ白に騒いでくれる(あ~あ! また泣きそう)。
夫が軽井沢に帰る夢を見たそうだ。「キャリーが待ってる。早く帰ろう!」なんて涙ぐむから、私も泣いちゃった。
帰れるものならとっくに帰っている!
ジジババが二人で泣いてる姿なんて、絵にならないけどサ!