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内田康夫夫人であり、作家・エッセイストでもある早坂真紀の随想を不定期でお届け致します。

ツキのない日

2019.10.9 Wed

3ヶ月に1度の定期検診に行った。
からだはもう大したことないと思うけど、でももしかしたら……と、安心のために受けている。
私のからだは、夫の介護の後期ころに悲鳴をあげ始め、夫を見送ったあと、からだのあちらこちらがおかしくなったことだし(頭がおかしいのは、たぶん生まれつき)。
美容院に行って円形脱毛症を指摘された。病院で階段を踏み外した。
肋間神経痛(これはホント辛かった)、左足の指の疲労骨折。
極度の不眠症(不眠症は元々で、以前「眠れない!眠れない!」と愚痴っていたら、夫に「大丈夫だよ不眠症で死んだという話は聞いたことないし、そのうち永遠に目が覚めなくなるから心配するな」と慰めてくれたことがあったっけ)。そして顔やからだのあちこちにブツブツができた。
あと……何だっけ? 鬱、脱力感、体重とウエストサイズの変化, etc.
そして定期検診。やっと来たタクシーに手を上げたら、私の後ろにいた若い男が(男性なんて言いたくない)、スッと私の前に出てタクシーに乗ってしまった。
「エッ?なに……? こんな日本人がいるんだ!」と腹立ち紛れに「バカッ!」と心の中で怒鳴っていた。朝からツイてないや。
病院に行ったら待合室に人が溢れている。他人のことは言えないけれど、圧倒的に年寄りが多い。
席が埋まっていたので、私は待合室の入り口のところで席が空くのを待っていた。診察が終わって次の人が呼ばれた。呼ばれた人が立ったので座ろうとした私を押しのけて、おばあさんが座ってしまった。チェッ! ツイてないの!
心の中で「あの人の方が見た目にはオババだけど、きっと私が若く見えたからだ」と見栄を張って背筋をのばしていた。
おじいさんの隣が空いたので、やっと私は座った……と、変な音がする。プッ!プッ!プッ!……と、間を置いて何度も何度も。気がついたら音がする度に腰を持ち上げているではないか。ワオ! ツイてないの! でも臭わないから気が付かないふりをしていた。
名前を呼ばれてそのおじいさんが立ち上がって、診察室に入って行った。
何と、おじいさんは残り香を置いていったのだ。さっきの音の香りだった。
ゲッ! ツイてないの!
今日は待ち時間が一時間。
まったく、今日の私はツキがなかったなァ! でもからだに変化がなかったことだし、それで良しとしよう。

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