ブログ

HOME > 早坂真紀つれづれ

内田康夫夫人であり、作家・エッセイストでもある早坂真紀の随想を不定期でお届け致します。

二回目

2018.5.10 Thu

ゴールデンウィークコンチェルトではなく、ゴールデンウイークカプリッチオも終わって、間もなく二回目の13日が来る。夫のいわゆる月命日だ。
あの最期の日の夫の穏やかな寝顔が、まだ私の目の裏から消えてくれない。
棺に覆い被さるようにして泣いたくせに、あれは夢だったのだと思ったり、はるか遠い昔の出来事だったのだと思ったり、違う! いま夫は取材旅行に行っているのだ、いや! 碁会所に行っているだけだ、ううん! すべてが夢まぼろしなのだ……と、私はまだ『現実』ということを完全には受け入れてない。
いつまでグズグズしているのだ! 何とみっともない。私が辛いといっても、他人にしてみればグズグズ・ジメジメは鬱陶しいだけだ。分かっているのなら、前世貴族の娘らしく、いい加減に胸を張れ! と、自分で自分を叱咤激励している。
だから他人から「頑張って!」なんて肩を叩かれたりすると、本気でムカついたりして、私はなんとややこしい性格なのだろう。
でもボチボチ夫の遺品の片付けに、本気で取りかかり始めた。
ある日突然に倒れて、そのまま病院に行ったからと割り引いても、夫は何と『きたな好き(きれい好きの反対語)』なんだと笑ったりあきれたり。
一作を書き上げても次の作品が待っているので、終わった作品の資料などがそのまま残されている。10年以上のもある。
取材を受けたその掲載新聞や雑誌が、そのまま残されている。
それを整理しながら、私は私で「フンフン、そんなことがあったっけ」と、記事を読みふけったりして……。私も整理整頓が苦手な上に、小物などを「そのうち使うことがあるかも」ととっておく方だから、ゴミ屋敷になるのも仕方ないかな?
でも新聞などその日付を見て、「ああ最初に倒れたのはこの3ヶ月後だったのだ」とか、「この4年後に人生が終わってしまうのに、なんで笑っているのよ」なんて、1人グズグズ1人ジメジメ。
命の終わりは分からないから生きていけるのだけど、4年後に終わることが分かっていたら、もっと「ああすればよかった、こうしてあげればよかった」と手を止めているのでは、これでは何年かかっても整理は終わらないだろう。
まァ、当分は他人を不愉快にさせないように、1人グズグズ1人ジメジメすることにしよう。
すべては時間が解決してくれるだろうから。

« 

2018.5.15 Tue やってまった!

 »

2018.5.5 Sat 地球→火星→?