内田康夫夫人であり、作家・エッセイストでもある早坂真紀の随想を不定期でお届け致します。
槍ヶ岳
2019.5.10 Fri
とにかく寒い朝だった。軽井沢の最低気温が-2℃だったなんて、そろそろ5月の中旬に入るというのによ! それに日中の最高気温が8℃だなんて、そろそろ5月の中旬だというのによ!
ゴミを捨てに出て、ふと気がついた。まだ芽吹き前の樫の大木のはるか彼方の山並みがまだ雪をかぶっていて、その端っこに一段と高いとんがった山がある。
アレッ? 槍ヶ岳?
そう! 通りかかった『空車』のタクシーの運転手さんに聞くと、やっぱり槍ヶ岳だった。
そうすると私が今まで我が家から八ヶ岳連峰が見えると言ったり書いたりしていたのは、間違いだった。あれが槍ヶ岳だったら、北アルプス?
まアいいや! いままでクレームがつかなかったのは、私のブログや文章を読んでいる人がいないか、誰も気がつかなかったということか……な? 『炎上』もなく、大した影響もなくてよかった。
しかし雪を頂いてつながる山々の、そして一段と突き出た槍ヶ岳の神々しいこと。36年も住んでいて、槍ヶ岳に気がつかなかった私の感性は何?
しかし寒かった。ガソリンスタンドのお兄さんたち(おじさんも含む)は、ダウンジャケットを着て「いつまでも寒いねェ!」とぼやいていた。
この日の軽井沢は、冬と早春と初夏が、ごちゃ混ぜになっているようだった。