内田康夫夫人であり、作家・エッセイストでもある早坂真紀の随想を不定期でお届け致します。
辞書
2019.8.8 Thu
今、若い人の中で、辞書が売れ始めているらしい。紙の辞書で、タイトルは忘れたけれど『言葉の辞典』だそうだ。
語彙を増やしたい、美しい表現をしたい、難読の漢字を読めるようにしたいという若者が出てきたとのこと。
それはメールの絵文字に飽きてきて、他人より一歩前を行きたいという、ある意味目立ちたいのかな? そんな目立ちたがりなら、私は大歓迎(私が歓迎したところで、何の意味もないけど)。
『辞典』って面白い。スマホなんかで調べるより面白い。
私はスマホはやらないから分からないけど、一つの言葉を調べる時、スマホはその言葉一つだけしか分からない。辞書ならその隣にある同音異義語がずらっと並んでいて、思わず興味を持って読み進んでしまう。結果、何を調べようとしていたのか忘れていたり、思わぬ時間が過ぎていたりすることもあるけれど。
無人島に流されるときに、一冊だけ本を持って行ってもいいと許可されたときは、『広辞苑』を持って行けと親に言われた。「一生楽しめるぞ」と。
まァ無人島に流されるような悪いことはしないから……。
私だったら「内田康夫の本を読め」と言う。だって彼の本は推理小説なのに豊富な語彙、難解な漢字、四字熟語、美しい表現, etc.がさりげなく溢れている。
いま彼の本の数々を読み直していて、こんなにもたくさんの言葉があったのかと、感動している最中だ。
感動した言葉や漢字をメモしようと思うだけで、トシのせいか頭をスルーしてしまうのが辛いこの頃です。