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内田康夫夫人であり、作家・エッセイストでもある早坂真紀の随想を不定期でお届け致します。

襟巻き

2020.3.26 Thu

私はNHKの『さわやか自然百景』や『ダーウィンが来た!』、『世界の車窓から』など、動植物の生態や見知らぬ風景を紹介する番組が好きだ。
この手の番組はイギリスのBBCが、よく制作している。さすが歴史的景勝地や動植物の生態を大切にする国だけあるなと思う。
先日『さわやか自然百景』を見ていたら、静かな真冬の森に棲む動物や小鳥たちを撮っていて、姿を現す動物や小鳥の名前を私は全部当てていた。コガラ、ヒガラ、アカゲラ……その他の小鳥たちの種類。そしてタヌキ、キツネ、ニホンカモシカ……と動物たちの名前。
なぜ全部言えたかというと、そこは私たち夫婦が軽井沢に越してきたころの、我が家の生活環境そのものだったからだ。
ベランダにやって来る小鳥たち、キツツキのドラミング、枝を渡るリス、庭を横切るキツネ等々。ニホンカモシカなどは、屏の代わりに植えてあるイチイの葉を 食べに来ていた。おかげで木の下はスケスケで、屏の役割を果たしてなかった。
心なごむ日々だった。しかしいつの間にか軽井沢が街化して、彼ら(彼女ら?)は姿を消してしまった。軽井沢はこれからもっと街化して、彼ら(彼女ら?)は もっともっと姿を消すことだろう。
テレビ画面の、キツネが尻尾を水平に保って歩く姿に、ふと60年ほどむかしを思い出してしまった。
あのころ……、キツネやタヌキの襟巻きがあった。たぶん私のすぐ下の妹も持っていたと思う。頭もついていた。口で自分の尻尾を咥えさせると、襟巻き状態になっていた。
あの頃はそれを何とも思っていなかったのだろう。動物愛護だとか保護だとか、 何も考えていなかったのだろう。もちろん私も何も考えてなかった。
人間は動物(魚も含む)を大量に捕獲して、数が少なくなってから気が付いて慌てる。私の前世のかの国だって、今でこそ動物愛護の厳しい国になったけれど、 私の先祖は領地でキツネ狩りなどしていたもんな! マナーハウスのエントランスに、狐狩りのタペストリーが飾ってあったっけ。人間って勝手なものだ。
偉そうなことを言っている私も何を隠そう、ロシアンセーブルのコートを持っている。着る機会もないけど、偉そうなことを言っている手前、着られずにいる。
いつかハリウッドで、アカデミー賞の表彰式にでも招待されたら、その時は……って、それはありえないか。

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2020.3.31 Tue 替え歌

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2020.3.21 Sat 学はあってもバカはバカ