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内田康夫夫人であり、作家・エッセイストでもある早坂真紀の随想を不定期でお届け致します。

学はあってもバカはバカ

2020.3.21 Sat

かまくら春秋社発行の『かまくら春秋』という月刊誌がある。
去年の5月号に私のエッセイが掲載されて以来、毎号お送りいただいて楽しく読んでいる。
何たって鎌倉は私の住みたかったところだ。巻末の駅周辺の地図を開いては、もしかしたらこの辺りに住んでいたかも……なんていう妄想はしょっちゅうだ(楽しい!)。
軽井沢に移る前に、鎌倉の土地を探しに行った。しかしその頃の我が家の収入では、隣りの生活音が丸聞こえという狭い土地しか買えないと諦めて、軽井沢になった。
たぶん鎌倉に移住していたら浅見光彦倶楽部も、クラブハウスも、ティーサロン「軽井沢の芽衣」も存在しなかっただろう。そうなったらもちろん、その後の「浅見光彦 友の会」も、内田康夫財団も存在しないはずだ。
それで憧れの鎌倉にある出版社からの依頼がうれしかったのだが……と、長い前置きだけど、毎号楽しみにしているのが、「川村二郎の『言語道断』」という読み物だ。
さすが元朝日新聞の編集委員。やや薄めのオブラートに包んでいるが、歯に衣着せぬ……と、ご自分の思いをお書きになっているのが楽しい。
私だってこの「……つれづれ」の欄で本音を書きたいけれど、炎上が怖くてぶ厚いオブラートに包んで、逃げ場を作っておいてチラッと書くことしかできないだらしなさ。
川村さんはちゃんとご自分の名前を出したうえで、時の権力者の許せないことなどを、読む人に「フフッ……」と笑わせるようにお書きになっている。
そう言えば我が夫も、時の権力者を作品の中でパロディって(私の創造語です)いたっけ。
もっと川村さんの本を読みたくなって『学はあってもバカはバカ』(かまくら春秋社刊)を取り寄せた。
まだ半分しか読んでないが、面白い……って、漫才のような笑いではない。風刺というか建前ではない川村二郎さんの本音に「クスッ……」と、溜飲が下がるという笑いだ。もちろん川村さんの考えと私とでは違うところは多々ある。第一、川村さんはインテリだ。そして交友関係が凄い。
登場する人たちのお名前を見て、知識人たちの交友関係ってすごいなァと、自分の生活レベルの低さが情けなくなった。
交友関係って、同じようなレベルの層の集まりになるんだなァ……と。
私は心が狭く社交性はないので、むかしから友人は少ない。だから気が付けば3日間も誰からの誘いもないことはしょっちゅうだ。そういう時は、郵便物を取りに玄関から外に出る以外、全く外気は吸わない。まァ、危ないウイルス対策にはいいのだけど。
妹が日に1度、私が生存しているかどうかのチェックでかけてくれる以外の電話もない。
もちろんメールもない。これじゃ脳が退化するばかりだ。学がない上にバカがバカになる一方だなと情けない。
この『学はあってもバカはバカ』は、退化するばかりの脳にちょっとした刺激になって楽しかった。肩こりが、ちょっと治ったかも……。
『言語同断』も早く1冊にならないかなァと、楽しみだ。

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