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内田康夫夫人であり、作家・エッセイストでもある早坂真紀の随想を不定期でお届け致します。

やっぱり本屋さん

2021.2.18 Thu

最近はコロナ禍のせいで『お籠もり生活』が続いているが、もともと私は本屋さんが大好きだ。
立ち読みをしたことはない。買う本がなくても、本屋さんに入ると自然と文芸書のコーナーに足が向いている。そして平積みのコーナーから棚へと進むのが常だった。
以前は新刊が出ると必ず『内田康夫』がドンと平積みされていたので、そこでわざとらしく手に取って、感動したようなクサイ演技をしていた。今はチラッ!と見て素通り。これからも多分素通りだと思う。だってもう新刊がないんだもの。(*)
文庫コーナーに行って『内田康夫』を確かめて、沢山あると「ムフフ……」。少なかったら「あ! 売れてるんだ」としばしの幸せ感。
私が本を買うときはまずタイトルだ。棚に並んでいる本のタイトルと著者名を見て手に取り、表紙絵を見て帯の惹句を読む。そして目次を見て気に入ると買う。
本屋さんでのこの瞬間が、たまらなくいい。この感覚は本屋さんでないと、絶対味わえない。
家に帰って読んでいい作品だなと思うと、次の機会にまたその作家の作品を買ってくる。そして「ん……?」だと、その作家のは二度と買わない。
夫が言っていたのはこのことだなと、しみじみ思う。
常日頃、夫は言っていた。「たまたま読んだ作品の質が悪いと、今までの作品がいくらよくできていても、読者はその著者の次作からは手に取らなくなるよ」 と。それだから彼は一作一作手を抜かず、全力投球だったのだ。
そんなこと言われても、私の能力なんて高がしれている。全力投球なんて、そもそも『内田康夫』と私とは、比べること自体失礼なくらいレベルが違うからなァと、早くコロナが収束して本屋さんに行って、棚の本の品定めをしたり『内田康夫』と書かれたインデックス(業界ではベロと言ったり耳と言ったりするらしい)に、ニマニマしたい。


(*事務局注 今年3月、早坂真紀『夜想曲―別れ』と同時発売で、内田康夫の新刊『南紀殺人事件』が刊行の予定です)

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