内田康夫夫人であり、作家・エッセイストでもある早坂真紀の随想を不定期でお届け致します。
朧月畑?
2021.3.2 Tue
コロナ禍で外出もできず、私はこの冬は東京でずっと籠の鳥のシティーガール……じゃない、籠の鳥のシティー婆-ルをしていた。そのシティー婆ールは少し暖かくなったら軽井沢に帰ろうと思っていた。
暖かくなったから「いざ!」と帰ってきたら、あれっ? 帰ってきたらまた寒さが逆戻りしてしまった(しまったァ!)。
夫が病気になり介護生活が始まって3年半、そして亡くなってからもう3年も過ぎた。6年半前まではこの寒さの中でいたのだと思うと、自分の老いをしみじみと感じる。
軽井沢に移住してきたころの冬、最低気温が-20℃という夜が一週間続き、日中の最高気温が-7℃という日もあった。洗濯物を干そうとベランダに出たら冷凍シャツになっていて、それも楽しかった。♪あの頃きみは若かった♪だ。
しかしこの凜とした寒さが寒冷地の魅力なのだけど、今は心も寒いから……。
寒いので暖房をしっかりと入れ、コロナのウイルスを浮遊させないためとお肌ガビガビ予防のために、しっかりと加湿している。室温24℃(ちょっと暖か過ぎ?)、湿度55%、夕方は外気温-2℃になってガラスの結露が始まる。
そして私の妄想タイムに突入。
カーテンの中に入って結露したガラス戸越しに町を見下ろすと、足下から冷気が上がってくるけれど、町がぼんやりと霞んで、素敵!素敵! 街明かりの一つ一つが、まるで朧月に見える。菜の花畑ならぬ、朧月畑みたい。
しばらくうっとりとしていたけれど、足が冷え冷えで♪菜の花畑に入り日薄れ♪と歌いながら妄想の世界は終わり。
私のブログに♪がしょっちゅう出てくるけれど、声を出してないと「いざ!」というときに声が出なくなるからと、歌が好きだから。