内田康夫夫人であり、作家・エッセイストでもある早坂真紀の随想を不定期でお届け致します。
トリセツ
2022.11.21 Mon
リビングのテレビの横にカバーをした本があった。見てみると『妻のトリセツ』とあった。買った覚えがないから、誰かが忘れていったのだろう。
トリセツ? 妹に聞くと「取り扱い説明書」の略語のことだと教えてくれた。そして「今頃? ずいぶん前に流行った言葉よ」と笑われた。
日本には何と略語の多いこと。パソコン・電卓・スマフォ……, etc.
これは妻の取り扱い方の説明書か。面白そうなのでパラパラとページをめくってみた。
何と! 世の夫たちは、妻のイライラにこんなに怯えているのか。可哀想に!
脳には男性脳と女性脳が存在するのだそうだ。
女性脳は何十年分もの類似記憶を、一気に展開する能力があるのだそうだ。何かのきっかけで夫の過去の発言の数々が蘇り、「あの時ああ言ったこう言った」と怒りに展開するのだそうだ。
しかし……。ああ言ったこう言ったと言われても、その言葉の前振りがあるだろうし、どんな雰囲気でああ言ったのか、何に対してこう言ったのかを説明しないのでは一方的でフェアじゃないって、アレッ? 私、男性脳に近い?
私も、怒りではないけどむかしのことはよく覚えている。
でも私のは、あの時私がああ言ったらこう言った、私がこう言ったらああ言った……と、ちゃんとその時々の状況説明をしている(たぶん)。
メモをしていた訳じゃないのに、女性脳は自分が言ったことは覚えてなくても、相手に言われたことはちゃんと覚えているのだそうだ。むかしのことをほじくり返しても仕方ないと思うけど。時間は流れて状況は変わっているのだから。
まだ全部は読んでないけど、そんな女性脳の『取り扱い説明』の本らしい。逆もまた真なりだけど、もう私には必要ないか!