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内田康夫夫人であり、作家・エッセイストでもある早坂真紀の随想を不定期でお届け致します。

時の流れ

2022.11.15 Tue

軽井沢を三週間留守にしただけなのに、鬱陶しいほどの緑がすっかり無くなっていた。道路と言わず玄関先にも落ち葉の絨毯が敷きるめられ、どこからどう掃除をすればいいのか。
道路は管理事務所が掃除してくれるからいいのだけど、玄関先の落ち葉は……なんて奥ゆかしいことを言っているけれど、管理事務所の掃除車が来る前に道路に出しておけばいいのだと、ズルいことをしている。
そう言えば雪の時もそうだった。積雪すると管理事務所の除雪車が道路をきれいにしてくれる。だから玄関先の雪は、いつも除雪車が来る前に道路に掃きだしていた。もちろん枯れ葉掃除も雪かきも私の仕事だった(我が家には男手がないからと、いつも私は夫に嫌みを言っていたっけ)。
♪犬は喜び庭駆け回る♪で、キャリーが雪かきの邪魔をするのでベランダに閉じ込めたまま雪かきをしていた。手伝いもしないのに、夫はワイワイ騒ぐキャリーのために、すぐベランダの戸を開けてしまう。
キャリーはうれしくてうれしくてはしゃぎ回って、私の邪魔をしていた。そして雪かきが終わる頃を見計らって、夫が玄関から顔を出して「終わった?」「うん、終わった」「じゃ、僕、碁会所に行ってくる」と、車でビューン。
時が流れてキャリーが逝って、また時が流れて夫が逝った。そしてまた時が流れて、いつかは私もいなくなる。
キャリーのときは夫と二人で泣くだけ泣いた。私が立ち直るのに二年かかった。夫のときは、あれから五年近く経つのに、私はまだ……ダメ!

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