内田康夫夫人であり、作家・エッセイストでもある早坂真紀の随想を不定期でお届け致します。
青春……Ⅲ
2022.12.31 Sat
このところ肩こりがひどくて『トシ』には勝てないなと思ったら、20代初めのころの肩こり……いや肩から腕にかけての酷いこりを思い出した。
あの頃(20代前半)は、6畳の畳の部屋にガスと流しがついているだけで、トイレと洗濯場(洗濯機はなかった)は共同の、女性専用のアパートに住んでいた。お風呂もなく、洗面器とタオル・石けん・下着を風呂敷に包んで銭湯に通っていた。
残念ながら♪小さな石けんカタカタ鳴った♪のようなロマンティックなことは何一つなく、私はなかなか近づけない夢を追いかけていた。
その夜、NHKラジオで(テレビは持ってなかった)シューベルトの未完成交響曲の放送があるので、会社から帰ってすぐ銭湯に行き夕食を済ませ、実るあてはないけれど、でも実りを夢見て歌謡曲の詞などを書き、早めにお布団を敷いて横になった。
ラジオから流れてくる♪シャァラララァ~シャラララララァ♪と、音を表現できないのが残念だけど、私は仰向けになったまま第二楽章の終わりまで、腕と言う名のタクトを振り続けていた。
アダージョの部分は優しく、フォルテは力強く拳を振り上げて「ウン! パッ!、ウン! パッ!」と、いい指揮が出来たと(アホだね)曲が終わってラジオを消して満足して眠りについた。
翌朝……何てこった。肩から腕にかけて、筋肉がカチンカチンに凝っているではないか(今は何日かしてから症状が出るのだけど、若いからモロ翌朝!)。顔を洗うのにも不自由なほどだった。バカだねエ!
これも青春の1ページだけど……、若さってやっぱりバカだねエ! でも帰ってこない若さだからこそ、ほろ苦くなつかしい。
このところ、やたらと昔のこと思い出してばかりで「もしかして、そろそろ夫がお迎えに来るのかしら?」と言うと、10人が10人ともニヤッと笑って「イヤイヤ当分死にそうにない!」と言う。
コラァ! 何て人たちだ! 私は自分では儚くなよなよとしてジトーッと上目遣いで涙ぐむ、脆くも壊れそうな……って(ここまで読んだあなた、いま笑ったでしょ!)、私は虚勢を張る方だから、顔で笑って心で泣いて……派だ。自慢じゃないけどむかし会社で「色気のねえヤツだ」と、上司に言われたことだってある。今ならセクハラだけど、仕事に色気はいらないと心の中で毒づいていた。
お金と色気のない人生だったけれど、まァ、健康であることに感謝・感謝で今年も終わる。美人でなくても足が短くても、頭が悪くても健康であることが一番!
私のくだらないブログをずっとお読み下さって、ありがとうございました。
皆さまにとって、新しいい年が健康な1年になりますように。
そしてウクライナに平和が訪れますように……。