内田康夫夫人であり、作家・エッセイストでもある早坂真紀の随想を不定期でお届け致します。
リハーサル
2017.1.31 Tue
春の陽気だそうだ。こんな穏やかな日は別名『散歩日和』とも言う……と、これは私が勝手に決めた。
もう南極探検隊ではなく北欧探検隊程度の寒さ対策で、夫を散歩に連れ出した。
ウメはもう盛りを過ぎていて「いまは○○(私の本名)ちゃんザクラだね」って。
病気だと思って優しくしているのに、何と言う失礼な夫だ。ダジャレだけは衰えてないなんて。
「私はもう、ウバザクラという年齢を、とっくに通り過ぎているわよ」というと「そうだね。ウバザクラはまだ花びらが残っているもんね」。失礼な!
そして相変わらず軍歌を歌い、軽井沢に帰りたいと言って、病気が治って軽井沢に帰り、会員さんの前で「ただいま!」を言うのだと、二人して、そのリハーサルまでした。
たどたどしい滑舌で「ただいま!」と、何度も練習する夫に、私はまたウルウル!
ほんとうに会員さんのことを大切にしているのだなと、胸はキュンキュン!
くどいけど、会員さんが『内田離れ』をしてないことを、私は心の底から切なく願っていた。こんなにも会員さんのことを愛しているのだもの。
完治しなくていい、せめて長距離ドライブが出来るようにとの奇跡を願いながら、その後二人で短歌のお勉強をした。