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内田康夫夫人であり、作家・エッセイストでもある早坂真紀の随想を不定期でお届け致します。

記憶の底に

2017.2.27 Mon

クレジットカードの会社から、会報誌が届いた。表紙は白黒の『鉄腕アトム』の絵で、『日本アニメが100年』という特集を組んでいる。
ふと記憶の底に眠っていた、歌と映像が蘇った。そのころ住んでいた台北で見たアニメだ。祖母か母に連れられて見に行ったのだと思う。
1つは♪てんてんテントウ虫 おてんと様の子 お花をのぞいてこんにちは 葉っぱに止まってこんにちは おてんと様がいっぱいだ♪と、メロディーだって覚えていた。そして巣を張った蜘蛛が出てきて♪ゆらゆらゆらと 銀のハンモック 1番目には誰乗せよ♪
ストーリーは覚えてないけど、スクリーンの絵は漠然と残っている。蜘蛛の糸に掛かりそうになるテントウ虫に、ドキドキしていたことだろう。
そのミュージカル調の『くもとちゅうりっぷ』(だった)は、1943年の制作だそうだ。
そして2つめは、船(軍艦だった)の上で服を着たウサギが耳で信号を送っているシーンだけを覚えていたアニメは、『桃太郎 海の神兵』という1945年制作のアニメであることを知った。
1945年制作……って、この年の8月まで日本は戦争をしていたのだ。そして翌年の2月に台湾からの引き揚げが始まった。だから映画館に行ったのは台北。
え~ッ!? 日本に引き揚げてからは大変な暮らしだったが、それまで私たちはどんな暮らしをしていたのだ? 戦争末期に映画だなんて。
そしてそのアニメの記憶が、あれから72年もたって、こんな年齢になってしまった私に残っているなんて。
人間の記憶力に、しばらくボケーッとしていた。ボケーッ……で、ボケではない、念のため。

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2017.2.25 Sat 残念!