内田康夫夫人であり、作家・エッセイストでもある早坂真紀の随想を不定期でお届け致します。
春爛漫!
2017.4.8 Sat
今日は生憎の雨だけど、東京は春爛漫。東京に、こんなにも桜の木があったのかとびっくり。
公園は勿論のこと、道路沿線に、鉄道沿線に、神社仏閣の敷地に、皇居のお堀端に、そして他所さまのお宅のお庭にと、東京のあらゆるところがピンクに染まっている。
ちょっと歩けばピンクだらけなのに、上野や九段あたりは道路の渋滞が酷くて困っていると、タクシーの運転手さんがこぼしていた。
「どこででも桜を愛でることができるのに、なんでテレビで発表した場所に集まるのだろう」と。
混んでて動きがとれなくて、メーターばかり上がるから、少し遠回りになるけれど道を変えてもいいですか?と聞いたら、桜を見ながら行くんだ。余計なことを言うなと叱られましたとのこと。これが渋滞の原因なんですよね。そのくせ「なんでいつもより高いんだ」と、また叱られましたと笑っていた。
私は昨日、夫と花見をした。
車椅子をゆっくりと押しながら、いつも通り歌ったりおしゃべりをしたり……。
この季節だから当然春の歌が多いし、おしゃべりは古典ものだった。
「そうだ! 『華の下にて』があったじゃない。出だしが西行の……」と言うと、突然「願わくは花の下にて春死なむそのきさらぎの望月のころ」だって。
でも如月って2月でしょ。2月に桜は咲かないでしょ……。望月って、2月の満月ならあるかもしれないけど」とバカな私。
やっぱりバカでした。
「バカだなア! 旧暦だから今でいう3月だろ。それに『きさらぎの望月』って、2月の満月だけじゃなくてお釈迦さまの亡くなった日という意味もあるんだよ」と……。
バカと病人の、高尚な花見だった。